幻想旅行(ジャケット表)  

幻想旅行 / 幻想旅行II  ( 山崎ハコ )

● 山崎ハコ  ( やまさき・はこ )

大分県日田市生まれ。のち、横浜に移住し、1975年、18歳の時にアルバム『飛・び・ま・す』でレコード・デビュー。
1986年のライブ盤『私の幸せ』まで、年に1〜2枚のペースでアルバムを出す。
その後1990年『SA・SU・GA 流石』発売までの数年間、アルバム制作のブランク、ライブ活動の停止という時期もあったが、演劇出演や映画音楽など地道に活動範囲を広げ、1994年には『十八番』で第37回日本レコード大賞アルバム企画賞を受賞。

2001年から、五木寛之原作・脚本の前進座創立七十周年記念特別公演「旅の終りに」の歌手役で出演、全国ツアーに参加。
現在もライブ活動、アルバム発表を続け、2005年にはデビュー後30周年を
むかえる。

300曲近い自作曲を歌うほか、北原ミレイ、熊谷美由紀、石黒ケイ、吉川忠英、裕木奈江、島倉千代子など、多彩な歌手に楽曲提供していることも注目される。

※ 得能氏のサイト(山崎ハコに関する膨大で詳細なデータベース)
  →  http://www.st.rim.or.jp/~tokunou/hako.html  をご参照いただきたい。
  また、当サイトの「資料蔵」に「山崎ハコ・ディスコグラフィー」を掲載。


● 演奏旅行≠ゥら幻想旅行≠ヨ

デビュー後の数年間、過酷ともいえる全国コンサート・ツアーを敢行。
彼女自身の発言によると、この『幻想旅行』制作時期までには、全国の都道府県すべてに足跡を残したという。
この2枚のアルバムには、行く先々で感じとった日本各地のローカルな風土の特色と、彼女の心象風景が色濃く出ているように思う。

つい先日、山崎ハコのライブをひさしぶりに聴きに行ったのだが、その時にも、この時期のツアーがたいへんだったこと、そのツアー体験から生まれたアルバムだったことをステージで話していて、なるほどと思ったものだ。

● いいアルバムは顔≠烽「い

内容のいいアルバムは顔=iジャケット)もいい。 これがぼくの持論。
『幻想旅行』発売から5ヶ月後に、続編ともいえる『幻想旅行II』が発売された。
この2枚で1組という感じがするが、1枚目のジャケットはことに秀逸。
デビュー直後の数枚では、まだ幼さの残る顔だったのが、ここでは別人とも思える自信に満ちた顔で、風格さえ感じさせる。
彼女のLPは、現在、入手困難。 CDでの再発売を望みたいところだ。

幻想旅行 1981/11 キャニオン
幻想旅行(ジャケット裏)
幻想旅行 (ジャケット裏)
幻想旅行II
幻想旅行II 1982/4 キャニオン

● 聴きどころ

前々作『歩いて』(1980年10月)、前作『茜』(1981年4月)あたりから、山崎ハコのアルバムは雰囲気が変わったように思う。
『歩いて』では、ハコの歌声に自信が感じられ、編曲(安田裕美、笛吹利明)にも深みが出ている。 バックコーラスに、中島みゆきや石黒ケイ、吉野金次など錚々たるメンバーが参加。
録音もスタジオ一発録り(ライブ録音)と聞いている(ラジオ番組でのハコ自身の発言)。
続く『茜(あかね)』は、さらに意欲的で、編曲者に喜多郎、松井忠重、千野秀一、井上淑彦、福井峻をむかえ、凝ったアレンジを聴かせている。
また、共演者として、ジャズ・サックス奏者の坂田明が参加(「母のような子守唄」)。
プロデューサーのアイディアなのか、ハコ自身の希望なのかわからないが、この時期、一連の意欲作の流れで『幻想旅行』が生まれたのだと思う。
彼女の最高傑作と言っていいアルバムである。

茜
茜 1981
 
幻想旅行  B-1のみ作詞:工藤順子/補作詞:山崎ハコ/作曲:石黒ケイ、他は作詞・作曲:山崎ハコ
No 曲 名 コメント この一節
A-1 幻想旅行 アルバムのテーマ曲
金管を効果的に使ったがアレンジがいい
♪もちろん心が貧しいからだけど
  傷ついたなんて思うのが怖い
A-2 北北東 ヨコハマから北北東へ
旅立ちを歌う
♪きのう突然 ハマを出たよ
  とりあえず北へ向うつもり
♪これからは どこへも戻れない
  家なんて初めから仮の宿
♪オー バイバイ バイバイ
  オー さよなら
A-3 終点まで満員 東北本線車中の情景、上野を発って北へ
評論家の平岡正明氏に 「ビリー・ホリデイの『気ままな旅』(Travelin' Light) を思わせる」 (『歌謡曲見えたっ』) とまで言わせた
明るい曲調の佳曲
♪東北本線いつ乗っても
  お茶がこぼれて一人笑う
  終点まで行くつもりが
  ふと仙台あたりでおりたくなる
A-4 東北・都 青森、ねぶた、青函連絡船
軽快な曲
♪今度来るときぜひねぶたにおいで
  病気なんかふっとんじまうよ
A-5 雪の道 雪の原野を一人歩く
九州生まれの彼女に、一面の雪におおわれた世界は、よほど強い印象を与えたのだろうか
♪もう一度行ってみよう
  今度は一人で行くんだ
♪迷うはずがない
  確かな道など初めからない
♪雪の道 何をかくそうと
  小さな足跡 私だけの道
B-1 サンクチュアリーへ 北海道苫小牧
広大な大地、まっすぐな道路
工藤順子の歌詞が秀逸
♪ヘイヘイ ストップ 北へ北へ行くんだ
♪そうよそこは サンクチュアリー
B-2 港の歌 三陸海岸
電気バイオリンの伴奏が効果的
♪今夜も港が 私を呼んでる
B-3 さくら 東北(さくらんぼ)
生まれて初めて実のなる桜を見た、彼女の感動が伝わる
♪さくら咲いて 赤い実のさくら
  私のさくら 実のないさくら
B-4 歌は旅 彼女の歌手生活のテーマ曲といえる
15歳で故郷を出て横浜に来たときの体験が歌いこまれている
♪どこもここも好きだなあ…
  心の底からそう思う
  その日まで歌は旅
  続け 歌は旅
B-5 旅路 佐渡
ライブでもたまに歌う
感動的なバラード風名曲
ここでも彼女の幼い頃の思いが歌われているように思う
♪足の下で雪がなく
  ギュッという声ききたくて
♪旅は私 もう帰らない
幻想旅行 II  B-3のみ作曲:梔子、他は作詞・作曲:山崎ハコ
No 曲 名 コメント この一節
A-1 スコール 沖縄、ギラギラ照りつける太陽とスコール
病弱な「私」と強烈な沖縄の出会い
こんなふうに沖縄を歌った例をぼくは知らない
♪ああ 逃げてゆく雨よ
  私を連れていかないか
  ああ 沖縄の(ウチナアン)空よ
  その熱おくれ
A-2 ばいばいことば 九州、日田から福岡へ(大宰府、甘木、…)
生まれ故郷の言葉で、のびやかに歌う
♪ばいばいことばは つまらんばい
  ほらまたいうた つまらんばい
A-3 海鳴り 山陰(日本海)の海鳴りが聞こえるような… ♪日本海を見たいなどと 誰が言った
  おまえなんか波にのまれて
  飛んでゆけ
A-4 あんたの大阪 河内音頭を思わせるリズム
大阪弁でコミカルに歌う
♪エーエエエ 今は少しアホになって
  上向いて歩く
♪夢の中の大阪 あんたがいるよ大阪
  ちょっとしんどいが 笑ってしまおう
A-5 ペンフレンド 広島、原爆ドーム、重い内容 ♪観光客のような顔で
  ぼくは歩いていたらしい
B-1 港の景色 神戸
向井滋春のトローボーンがジャジーなムードを
出している
♪港の景色 なつかしい思い
  ふるさとでもないのに
  すこしおかしいね
B-2 遠参り 四国八十八ヶ所、お遍路
和太鼓としのぶえが効果的
曲調は明るい
♪心の着物を脱いで
  裸で祈るのが怖い
  それだから いつになっても
  神があきれて えーえー 熱を出す
B-3 若草山 非常に幻想的で、一種不思議な歌の世界
和太鼓、能管などの和楽器が使われている
♪若草山まで 連れて行って
♪若草山が見えてきます
  あなたはいったい誰なのですか
B-4 幻想旅行 1枚目とアレンジが変わって、エレクトリックなサウンド
この曲を最後にもってきたことで、2枚組アルバムのようにみごとに完結した
♪わかってもらえず
  わかってあげようとするばかりで
  少し一人ですさんでいるんだ

( 2004/12/18, 2005/4/27訂正 )